早稲田大学優勝や拓大岡田監督名采配と共に、不可解なNumberの記事を見たりtwitterのタイムラインを追いながら、感じた箱根駅伝2011について


今年の箱根駅伝早稲田大学の優勝で幕を閉じました。
解説者もさぞかしご機嫌なことでしょう。笑
競技スポーツとして気になったのは4点。
ひとつひとつを細かく書くときりがないので、端的にー。


佐久長聖高校の両角速監督の指導方法(競技としてではなく、人として)
特に1区区間賞の早稲田・大迫選手のインタビューには驚かされました。
敬語の使い方が素晴らしかった。
トップでタスキを渡したことにドヤ顔することなく、
直後に、「サポートに回ります」という謙虚な姿勢。
理工学部に在籍する2区の平賀選手も文武両道。
指導者はコーチである前に教育者です。
高校時代は丸坊主で修行僧のように長野の山を走る彼らを育てる両角監督には、
是非一度人間育成方法をお伺いしたいものです。


拓殖大学・岡田監督の名采配
就任1年目にして、大学史上最高7位。
かつて予選会で涙を流し続けた拓殖大学をたった1年で変えてしまいました。
2006年亜細亜大学優勝の衝撃はまぐれではない。
エースに頼るチームではなく、底上げ。
来年の拓殖大学がさらに楽しみです。


■華やかに引退させてくれる、稀有なアマチュアスポーツという再認識
会津高校⇒早稲田大学三菱商事」という華麗な経歴を歩むことになる、5区の早稲田・猪俣選手を見ながら思ったこと。
他のアマチュアスポーツはもちろん、プロ野球ですら華やかに引退できる人は少ない中で、
100人以上の学生選手に華やかな引退レースの場を提供する箱根駅伝は選手側から見たら幸せなスポーツだと思いました。


■茶髪の選手が減った。
早稲田、東洋はゼロ。かつて派手な印象のあった法政大学の姿は、ない。
各大学がブランディングとしてPRを意識し始めた結果だろうか?
茶髪が悪と決めつけるのは良くないが、佐久長聖同様、
駅伝部が人間育成の場として指導者が変わりつつある良い傾向を感じる。




しかし。


「スポーツの主役は選手じゃない。」


とは、スポーツ社会学の松村先生のお言葉。




もう少しマクロ視点で箱根駅伝を見てみます。
大学視点で。




平野綾の言葉を借りれば、箱根駅伝の"ライフライン"は受験料。
2連覇を果たした東洋大学は数億円の受験料の上澄みを獲得したと言われています。


早稲田大学などの名門校にしたら箱根駅伝に感化されて受験先を決定するようなお下劣な受験生は不要でしょうが、
競争下にある大学は優秀な学生の獲得以上に大きな収益源である受験料の獲得に必至です。


個人的な話ですが、twitterのタイムラインは早稲田一色でした。
TLを見ながら再認識。人数だけではない、WASEDAの伝統、プライド、OB力。


仮に受験料を撤廃して、税制を改正させて、
アメリカみたいに寄付によってカレッジスポーツを成り立たせるような仕組みを作ったら、
早稲田大学以外の箱根駅伝勢力図は大きく変わるなと思いました。


営業力やPRやプロモーションなど、過剰な"外見"は人々を不幸にさせます。
箱根駅伝というビッグなPRチャンスを生かす前に、中身とのバランスは取れているのか?
「他の大学に落ちたから、仕方なく行きました」これではプライドは育たない。
駅伝部予算によって犠牲になっている部活はないか?
駅伝部予算によって犠牲になっているカリキュラムはないか?
受験料や授業料の活用して、大学の本分である国際的な競争力を持つ人間育成の場として、
外側と中身を予算配分によってどう作っていくか、が箱根駅伝の本質的な課題なのかもしれません。
ひとつのアマチュアスポーツイベントが大学経営にまで影響を及ぼすとは、、
改めてその凄さを感じます。




駅伝をテレビで見ながら、不可解なNumber記事を見つけました。



[スポーツ・インテリジェンス原論]
選手獲得競争が箱根駅伝をダメに!? 大学に求める「勧誘条件の平等化」。
http://number.bunshun.jp/articles/-/74362


記事中のタイトルを抜粋すると、、、
・地方の経済的疲弊が、箱根駅伝にも大きな影響を!
・地方から首都圏へ進学させる余裕のある家庭は多くない。
・では実際、大学はどんな手段で選手を勧誘しているのか?
・経済の沈滞と格差が大学間の過当競争を生んでいる。
とあります。


??良く分からない。。


推薦枠のスカウト市場について、
まず買い手(大学側)から売り手(選手およびその家庭)に"優遇"を与える以上、
推薦枠のスカウトは必ず買い手優位な市場です。
大学で陸上競技を希望する人が推薦枠を下回らない以上、この前提は変わりません(そんなことはありえない)。
つまり、有効求人倍率が1を下回る、「大企業と就活学生」の関係と同じ市場状況です。


その前提の中で、経済の沈滞は売り手の経済状況を圧迫し、
陸上競技を」「推薦枠で」希望する需要は増えても、減ることはありません。
つまり、さらなる買い手優位な市場になる。
(経済格差それ自体はそもそも市場に直接的になんら影響を及ぼさない)


つまり、氏の言葉を借りて、
「地方から首都圏へ進学させる余裕のある家庭は多くない。」
のであれば、氏の言う、
「授業料、教科書代を免除する選手の枠、数を決める」
は進学させたいけど余裕の無い家庭にとっては逆効果です。


買い手側への影響はどうでしょうか。
同じ日本、同じ買い手市場の大企業間によって経済状況の悪化によって過当競争を
生み出しそうな気配はあるでしょうか?
バブル期のように、買い手側の予算が過剰化し、
「囲い込み」による過当競争は考えられるでしょうが、
売り手側の経済状況を原因とした買い手側の過当競争激化、というシナリオは考えられません。
僕自身、経済学部の出身ではなく、あまり自信は無いので、
もし氏の言う因果関係を説明できる方がいらっしゃれば、是非教えて頂きたいです。


上記に述べたような過剰なPRや、男子マラソンに対する影響力等、
箱根駅伝の問題がないわけではありませんが、
現状の箱根駅伝や学生スカウトになんら悪い影響を及ぼさない、
「経済貧困」「地方経済の格差」「苦しい家庭」が
前面に出ているこの記事に強い違和感を覚えました。
ポピュリズム?2年前の年越し派遣村を思い出しました。


大学のスポーツは教育の側面を持つ。自由競争ではなく、一定のルールのなかでの競争であるべきだと私は思う。


教育はなんのためにあるのか?
彼らは大学を卒業するとどんな世界に旅立つのか?
日本は社会主義でしょうか?


市場経済とは自由競争市場です。
日経と野村が丁寧にイラストを使い、小学生でも分かるウェブサイトで紹介してくれています。


■早わかり経済入門「自由競争と独占禁止法の巻」
http://manabow.com/hayawakari/hayawakari11_1.html


スポーツにおける開放型と閉鎖型のメリットデメリットに関しては、
以下のサイトで整理されており、大変参考になります。


週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)短期集中連載(第1回)
:60億を投資できるMLBのからくり(2006年12月25日号)
http://www.transinsight.jp/profile/column0001.html


学生スカウトの早期化、
テレビスポンサー料金の極端な高騰化、
駅伝部の予算高騰による他のカレッジスポーツの極端な予算減少、
受験料の高騰化、
過剰な演出、
そんな悪影響が強くなれば再考の余地はあるのかもしれません。
でもルールを変える前に、やることやれることはいくらでもあります。


ウィキリークスがジャーナリズムに大きな問いを投げかけた2010年。
スポーツジャーナリズムも例外なく問われている時期に来ているのかもしれません。