”ピチT”金メダリストがもたらす経済効果


筑波大学体育専門学群。通称「タイセン」。


今はどうか知らないが、私が通っていた頃のタイセンの授業は、水泳部、剣道部、そして柔道部を中心としたメンバーが、教室の最後方に席を取り、居■りをすることが常識であった。


その日も、私は例に違わず、いつもと同じように水泳部同士で、何気なく教室の後方に座り、授業の準備をしていた。
その時突然、大きな笑い声が聞こえてきた。


「アハハ!このTシャツ、かわいいっしょ!」


パンパンに張った二の腕のおかげで、必然的にピチTとなったカラフルなTシャツを着ていた彼女の凄さを知ったのは、その直後に偶然テレビで観た、2001年の世界柔道での涙のインタビューであった。銅メダルでも悔しがる彼女を見たとき、あの時見た、二の腕の印象以上の実力の持ち主であることを知った。


「”一本”は完璧な勝ちなんです!」


今回の金メダル獲得後のインタビューで彼女は笑顔でそう答えている。
大学での彼女の印象と、バラエティ番組での彼女の印象と、試合後のインタビューでの彼女の印象は全て同じで非常に分かりやすい。そしてアテネから全て一本勝ちで2連覇。素人が見ていても非常に分かりやすい勝ち方である。


今回の日本選手にも多く見受けられるが、反則効果のみで負けが決まるような、観ているほうも負けた本人も煮え切らないような柔道をしていては、盛り上がらない。その結果、柔道の裾野は広がらなくなり、進行中ともいえる”お家芸消失危機”の進行速度を速める。


分かりやすい勝ち方と性格でお茶の間を盛り上げた彼女の功績は、今後の日本スポーツ界の発展という観点から考えると、北島選手の次に価値がある金メダルといえるのではないだろうか。


経済効果としての価値の大小は、同じ金メダルにも残念ながら間違いなく存在する。その金メダリスト自身の人間性もその価値を左右させる大きな要素のひとつと言える。金メダリストは彼女のようにお茶の間にとって分かりやすい選手ばかりではない。その価値を最大限に引き出すことを彼ら選手個人の力に頼るのは限界がある。”事前”、そして”事後”のメディア、PR会社等のさらなる連携が、少子化と体力低下により縮小が予想される今後の日本のスポーツ界において重要な役割を果たすことは間違いないだろう。




谷本歩実
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B0%B7%E6%9C%AC%E6%AD%A9%E5%AE%9F


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