今日の「報道2001」から「カネとスポーツ」を考えてみる


今日のフジテレビ「報道2001」の前半はオリンピックにちなみ「金とスポーツ」がテーマ。
フェンシングの北京オリンピック銀メダリストの太田雄貴選手が出演し、
国のスポーツ強化にかける費用の増額を訴える。


8月24日O.A.報道2001


・明太子のやまやの山本秀雄会長は、日本フェンシング協会の会長を務めており、
フェンシング強化費6000万円を集めた。
・継続的なスポーツ強化は「普及、育成、強化」のバランスで決まる。
・「金メダル大国」と「スポーツ大国」は別。
・過去の「金メダル大国」は東独、ロシア、そして中国。
・「金メダル大国」は「強化」に重点を置いたものであり、成果も一過性になりがち。
・日本は「スポーツ大国」を目指すべきであり、そのためには「普及」と「育成」が重要。
・日本はフィジカルエデュケーションとスポーツが混同している。
・オリンピックは文科省パラリンピックは厚生省が担当。ユニフォームも異なり、世界的に稀。
・西が丘のナショナルトレーニングセンター独立行政法人日本スポーツ振興センター」が管理しており、天下りが懸念される。
totoの利益の行き先が不透明。


二宮清純氏は「無駄ガネ削減策」の一例として、国体の存在意義を問われていたが、既に国体は縮小化の模様。
私の地元のコーチによると、今までは各都道府県で定められていた派遣標準記録が全国統一となり、
インターハイよりも高いレベルの標準記録が設定されているようだ。
毎年、各県から20〜40名程度の選手が国体には参加するが、栃木県で今年、
基準タイムをクリアした選手は5名にも満たないという。
選手時代を思い返しても、自分を含めて大半の選手がインターハイやインカレに照準を合わせるため、
調整をせずに国体に参加していた。
年によっては、トレーニングオフ期間中の開催もあり、
その際は事前1週間、全く泳がずにレースに臨んでいたこともあった。


競泳競技において、選手の国体に対する意識は決して高くない。
国体不要論が出ても、異議を唱える人は少ないだろう。


競泳の場合、「普及」の面においてはスイミングスクールの存在は欠かせない。
今回北京オリンピックに出場した選手のうち、スイミングスクールに通ったことのない選手はいないだろう。
小学校・中学校の学習指導要項上でいくら水泳の指導を強化しても、
国際レベル向上には直結しない。
二宮清純氏も仰っていたが、体育とスポーツを混同させてはいけない。
スイミングスクールを通じて、いかに多くの人たちにプールに触れ合う機会を提供し、
そして質の高い練習環境を提供できるかが、競泳の継続的な国際レベル向上につながるのではないだろうか。


健康志向の高まりで生涯スポーツにもなる水泳の人気は高まり、
フィットネスクラブも増えてきており、プール自体の数は増えている。
そのため、「普及」という面においては時流にも乗り、順調といえるのではないだろうか。
問題は「育成」の部分にあると考えている。
前回のエントリーでも書いたが、スイミングスクール最大手ともいえるイトマングループの買収の件により、
オリンピック選手を育てた名コーチが辞めていることには非常に強い危機感を覚える。
また、私の地元でも、県大会や全国大会でお会いするコーチは、
私が小学生の時のコーチの顔ぶれと20年近く経った今でもあまり変わっていない。
また、私の所属していたスイミングスクールでも、
ジュニア選手を教えていたコーチ(昨年のジュニアオリンピックで優秀コーチとして表彰されている)が
産休を機に今年退職された。
現在、選手クラスは私の恩師と、今年入社した、競泳未経験の若手コーチの計2名で指導に当たっている。
競技引退後に指導者の道に進む人が少ないことが、このような状況を招いているのだろう。
慢性的な人手不足を解消するためには、”OB”の進路が重要だと感じている。
当の私も”OB”として指導者の道も考えた時期があった。研究者の道も考えた時期もあった。
どのような形であっても水泳に恩返しをしなければいけないという義務感があった。


ただ、大学卒業時点で自分に一番の課題は「世間を知らないこと」であると自己分析したため、
全く異なる進路を選んだ。
一指導者、一研究者としてではなく、もっと大きな部分で役に立ちたいという想いは今も変わらない。
そして私のように恩返しをしたいと考えている”OB”は他にもいるはずである。
この「育成」面において、竹中平蔵氏が仰っていた税制優遇をいかに使っていくことができるか。
例えば大学スポーツはアメリカと日本との盛り上がり方の違いのひとつとして、税制の違いが挙げられる。
アメリカでは大学への寄付に対して税制の優遇があり、ひとつの大学に寄付だけで莫大なお金が集まり、
その資金を元手にカレッジスポーツを盛り上げている。
建物を建てるわけでもなく、選手を強化するわけでもない「育成」面を充実させるための、
カネを使った策はすぐに思い浮かばないが、今後の日本の競泳において、
最も深く考えなければいけない部分ではないだろうか。



太田雄貴
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E7%94%B0%E9%9B%84%E8%B2%B4


文教及び科学技術振興費について (財務省
http://www.mof.go.jp/finance/f2003e.pdf


二宮清純「スポーツコミュニケーションズ」
http://www.ninomiyasports.com/sc/