09/07/11 東京アイランドシリーズ 第15回新島オープンウォータースイミング大会 4.5km 優勝 【後編】「MONGOL800の名言に気づかされた、『勝負に勝って、レースで負けた』ということ」


(前編はこちら)


前置きがかなり長かったのだが、レース中にネタになるような話があまり無い。


”勝間流、スムーズな飛び込み”以降は、”目標”に向かってひたすらイージースイムを続けた。
平川選手の今後の人生において、同一人物にこれだけ長い時間、足の裏を見つめられることは、当分ないだろう。


最初の5分間以降は、集団も少なくなり、安心して足の裏を見つめることができた。
100m1分25秒という、プールの中では極度に遅いスピードではあり、レース中、
前に出たい欲求には駆られたが、週1回のなめた練習で未知の領域に挑むことを考えると、
それ以上、前に行く気持ちはすぐに失せた。


最初の1.5kmで一度目の上陸。
砂浜に足をつくタイミングは完全に平川選手のマネである。


しかしここで誤算があった。ランのスピードが明らかに違うのだ。
上陸から折り返し地点を回って、再び飛び込むまで恐らく距離にして20m。


片やトライアスリートで当然ながらランも現役、
片や人一倍重力に弱い、典型的なスイマー。


同じ28歳とは思えないほどのスピードの違い。
折り返し20mの距離で約2秒、スイムにして体ひとつ分の差が出来てしまった。
透明度の高い新島でも、足の裏が少し霞み始める距離である。



2周目に入ったその時、2つのことを思い浮かべた。


ひとつは、キャサリン・ヌデレバである。
女子マラソンで抜群の安定感を誇る、元世界記録保持者である。


彼女のマラソンスタイルをwikipediaに代弁させると、下記の通りである。


序盤は先頭集団の後方にいることが多く、じっくり後ろから集団を観察していることが多い。
また先頭集団から少し遅れた位置にいることもある。
そして中盤過ぎから先頭集団についていき、終盤にスパートして勝利というパターンが多い。
その計算しつくされたレース運びには定評がある。


箱根駅伝などを見ていても、大学のエースがプライドを背に前のランナーに追いつくものの、
後半沈み、追いついたランナーからも再び離されてしまう、といった姿をよく目にする。


目の前に出来た距離を一気に縮めようとせず、1周、1.5kmをかけて徐々に追いつこうと考えた。



もうひとつは、2周目の上陸方法である。
1周目のように後ろからタイミングを真似て上陸していては再度ランで差がついてしまう。
最終周回の出遅れは敗北を意味する。


ある程度1周目で上陸のタイミングは掴んだので、
2周目はランで離されることを想定し、横に並んで、上陸しようと決意し、実践した。


上陸のタイミングは変わらなかったものの、砂に足を取られ、結局は1周目と同様、差が出来てしまった。
3周目はラストスパートの恐れがあるため、早めに追いつく必要があった。


海側の折り返し地点である3周目の折り返しで追いつき、残り750mで勝負に出ようと決意。
周回遅れのスイマーに惑わされながらも徐々に近づく足の裏をひたすら見つめ続ける。


予定通り、ラスト750mで追いつく。ここからは我慢くらべ。余力の探りあい。
さらに200mほど泳いだ後、探りを入れるべく、平川選手の真横についてみる。



すると、突然平川選手がペースダウンし、浜側へ遠ざかってしまう。
不安に感じ、珍しくヘッドアップでブイを確認し、自分のコース取りが間違っていないことを確認。
(レース後、平川選手に聞いたところ、「ブイと船を間違えてしまいました」とのこと)


自分の左側に遠ざかっていく平川選手を見て、またもや箱根駅伝のワンシーンを思い出した。


選手は覚えていないが、沿道寄りに走る選手を道路中央側から抜き去るシーンが目に焼きついている。
横に距離があるために、すぐに後ろにつくこともできず、抜かされた選手は、置いていかれる。


そのシーンを思い浮かべながら、ここからは自分との戦い、と残り約300mでギアチェンジ。
ヘッドアップをしながら、ひたすらブイに向かって泳ぐ。もう足の裏は見えないし、見ない。


アクアスロンやスイムエキデンなど、この1年はペアやリレー種目しか出場しておらず、
プールと海の違いこそあれ、思えば5年ぶりの個人種目。
泳ぐ自分とゴールとの間の空間を何も遮らない、「無」の状態を経験することも何年ぶりだろうか。


新島の透き通った海を、先頭で一人ゴールに向かって泳いだ300mは、何物にも変えがたい気持ちよさで、
新島の海を独り占めしている気にさえなった。自分の立てた目標とレースプランを後悔した。


スパートから約5分後、念願の浅瀬に近づく。


平川選手のいない、単独での上陸は初体験であったせいか、つまずきながらも上陸。
ゴールテープの向こうで待つ同僚や、青少年センターの青沼さんをはじめとする島の方々が、


「はやく!はやく!」


と競技者以上に必死の形相で空気を掻いて手招いてくださる姿を目の当たりにするも、
意外と蓄積されていた疲労と、久々に味わう重力と、砂の歩きにくさでほとんど前に進まない。
これで追いつかれて逆転されたら本当に恥ずかしかったが、無事にゴールテープを切らせて頂いた。


10秒後に平川選手もゴール。


”金魚の糞”に対しても、嫌な顔ひとつせず、爽やかな笑顔で握手を求められる。


「人に優しくされた時、自分の小ささを知りました」


先日、3年ぶりのオリジナルアルバムを出したばかりのMONGOL800の名曲「あなたに」のワンフレーズが思い浮かんだ。



回想録が長くなったが、レースを通じて改めて目標設定の難しさを感じた。


目標によっては、達成しても喜びを得られない。
厳密に言えば、一瞬の喜びと引き換えに、それ以上の虚しさに苛まれることすらある。
人を傷つけることもある。(平川選手を傷つけてしまったということではない、、、多分。)


人生のプランニングも同じである。


ワークライフバランスという言葉がある。
それに対して、


「そんなバランスとっている暇があるなら、仕事しろ!」


と叫ぶワーカーがいる。ベンチャー企業に多く、私の周りにも少なくない考えである。


その大半が価値観の押し付けに過ぎないと思う。


「相手のライフワークを理解した上での提言かどうか」


これが押し付けか、そうではないかの判断基準である。


先ほどtwitterで呟いてみたが、「ライフワークなくしてワークライフバランスなし」である。
やりたいことも無いのに、ワークライフバランスか、ワークライフアンバランスかなんて分かるはずがない。


「徹夜も多く、一般的に見れば偏っていますが、今ワークをこれだけやらないと、僕のライフワークは実現できません」


これはワークライフアンバランスではなく、彼の基準ではバランスが取れていると思う。



最後は「目標設定」という共通項を出汁にしながら、
主張が脈絡を凌駕し、筋道の無い文章になってしまっているが、
次のレースでは虚しくならない目標を立ててみようと思う、という無理やりの締めくくりで長文を終えてみる。


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